Koki Fujinaka + Sanami Yamada | 2022 | installation | movie+sound(05;38 loop)
モニターに映し出される風景とその中のベンチに座る人物。ノイズキャンセリングヘッドフォンを装着するとスピーカーから聞こえる環境音は後退し、自分の聞こえる音をつぶやく彼の声が耳元で聞こえる。俯瞰した視点の映像から親密とも言える距離の声を聞くことができるのはヘッドフォンを装着している鑑賞者だけだ。 振り返ると声は窓に付けられた字幕とも対応していることがわかるだろう。スクリーンに見立てられた窓の向こう側の世界は、背後のモニターに映る場所とも地続きのはずだ。そこにいた彼の気配は、どれほどのリアリティと親密さを持って想像できるだろうか。 

メディアを通して窃視するような想像力によって可能になる〈どこか〉への縮地、リアリティを感じられる範囲を〈ここ〉と呼ぶことができるのだとしたら、それは自分の身体が存在する場所に留まらず、様々な媒体、あるいはそれぞれの思考や記憶を通して複数の時空間に複雑に絡まり合う。
本作は3つの音の位相=「映像の環境音(スピーカー)」「つぶやく声(ヘッドフォン)」「展示室の環境音」によって構成されている。音の開始や停止によって映像や展示室の内外に意識が移動する感覚を、表現的な追求の対象とした。
東京藝術大学の大学祭『藝祭2022』での展示を前提としたサイトスペシフィックな作品。外からお祭りの音と蝉の声が聞こえる展示室に、同じく蝉の声を含む映像の環境音がスピーカーから再生される。窓に投影される字幕にも「せみ」などの言葉が含まれ、窓の外の風景とリンクしているような錯覚を引き起こすだろう。映像と共にスピーカーからの音が停止すると実際の展示空間の環境音だけが残り、うっすらとした喪失感を作り出す。
タイトルの「party next door」は同名のサウンドエフェクトから引用した。エフェクトによって得られるドアの向こうのパーティーのような音響は『藝祭』の展示室と共通する。
Back to Top